2023年7月5日水曜日

シラスに登壇しました

 昨晩、五十嵐太郎さんと市川紘司さんが主催するネットメディア「シラス」に登壇いたしました。「都市計画と建築修復の接点を探る」というテーマは、イタリアのヴィンチ村、その後渋谷での会食時に五十嵐さんと相談し決めさせて頂きました。私としては、もう随分前になりますが博士論文の題材として取り組んだイタリア近代の建築と都市の問題について振り返る良い機会になりました。久しぶりすぎてど忘れしたところ、いただいたご質問にうまく返答できなかったところもありましたが、個人的には大変エキサイティングな勉強会、有意義な時間となりました。一発本番の収録イベントに慣れていない私の経験不足もあって、あたふたドキドキの2時間でしたが、進行役の五十嵐さん、市川さんにはうまくフォローしていただき、なんとか乗り切ることができました。この場を借りて御礼申し上げます。

2020年10月20日火曜日

『評伝フィリップ・ジョンソン 20世紀建築の黒幕』

 左右社から『評伝フィリップ・ジョンソン 20世紀建築の黒幕』が出版されます。マーク・ラムスターによる建築家フィリップ・ジョンソンに関する評伝の翻訳本で、私は監修をさせていただきました。ジョンソンの代表作「ガラスの家」を訪れたのはもう10年ほど前になります。本作がミースの作品と似ているなぁとは思ってはいましたが、なぜそうなのか、についてはモヤモヤした状態でしたので、あらためてラムスターの本には学ぶところ大でした。原著タイトルは「ガラスの家の男」ですからね。翻訳を担当したのは松井さんです。500ページもの大著をよくぞ訳し切ってくれました。編集担当の東辻さんにも大変お世話になりました。お二人には感謝申し上げます。本書のお話があったのは2年前くらいですが、本書にも登場するドナルド・トランプが大統領でいるうちになんとか刊行の運びになりました。トランプとジョンソンにどんなつながりがあったのか、ぜひ本書を手にとってみてください。

2020年4月30日木曜日

『リノベーションからみる西洋建築史』が出ました

 彰国社から『リノベーションからみる西洋建築史 歴史の継承と創造性』が出版されました。古代から現代まで、リノベーションの視点から西洋建築史を読み解いたものです。私は一番最後の20世紀を執筆担当させていただきました。石造文化の西洋世界は、文化遺産の意識が芽生える以前から、既存の物に新しい時代が手を加えることを続けてきました。現代のわれわれは、リノベーションという言葉で、その伝統をあらためて振り返り、これまでとは一味違った発見をすることができます。歴史の読解とはすなわちいつでも現代的なものです。だから、新しい建築史の本が出てくるんですね。企画に誘ってくれた加藤さん、編集取りまとめをしてくださった鷹村さんには謹んで御礼を申し上げます。

2020年3月31日火曜日

『建築雑誌』2020年3月号に寄稿しました

 日本建築学会『建築雑誌』の2020年3月号に、拙論「それでも歴史は建築学を動かす」を寄稿いたしました。本号の特集「歴史の効用」に対して、自分の考えをまとめたつもりです。建築学のなかで歴史を論じること、それ自体が実に貴重なことだと思います。制度上、建築学の上位に工学があることを思うにつけその思いは強くなるわけですが、建築学における「歴史の効用」を考える上で、歴史、建築、工学(あるいは科学)の関係を既成の色眼鏡によらず多角的に見直すことは必須の作業と言えるでしょう。職場で若い学生に接する機会が多いのですが、いまだに理系だ文系だっていうしがらみが根強くありますよね。それまでの教育経験を映し出しているんでしょうけれど、理系/文系、枠組みを自身に当てはめても良いことありませんよ。建築学に身を置くからこそインターディシプリナリーを大いに謳歌してほしいと思います。

2019年12月25日水曜日

『日本建築思想史』台湾版

以前、磯崎新さんと出した『日本建築思想史』が、この度、台湾で翻訳出版されました。日本ではあまり入手できないのかもしれませんが、台湾版は、表紙装丁、収録する図版がオリジナルとはたいぶ変わっています。表紙には、磯崎さんの「旧大分県立図書館」と「空中都市」が魅力的に登場しています。収録図版も磯崎新さん自身の作品が増えたように思います。オリジナル版は磯崎さんに建築思想史の読み手としての役割を期待していたわけですが、台湾版では《建築大師》磯崎新により強くフォーカスしていることが読み取れます。デザインによる訴求も強く押し出されている書になっているように思いました。情報が国境を超えるときに、こうしたアレンジは大いに結構なことだと思います。台湾のみなさんにも広く読んでもらえる一冊になるといいなと思います。

2019年3月1日金曜日

講義@ブレシア大学

イタリア、ブレシア大学での研修もいよいよ大詰め。ラスト・ミッションは、Theory of Architectural Restoration and Conservationの講義。しかし、2日で10時間の講義というのは、なかなかにタフ。しゃべる方も大変だけれど聞く学生もさぞかし大変なのではと思いながら、なんとか完遂できました。講義後に、イランからの留学生が質問に来てくれました。イタリアでイランの学生と触れ合えるなんてなかなか不思議な縁ですよね。きっとこうして世界各地の知が少しずつ交換されていくのでしょうか。ブレシアは、古代ローマの遺産からムッソリーニ時代のファシズム建築までを日々の生活のなかに感じることのできる実に魅力的な場所でした。ロンゴバルドの芸術も見事で世界遺産にも指定されています。大学キャンパスがそういう場所にあること、実に贅沢だなと。一年間の滞在を受け入れていただいたブレシア大学DICATAMの先生方・スタッフの皆さんに心より御礼を申し上げたいと思います。

2018年12月24日月曜日

『CASABELLA JAPAN』890号「終わらない建築」

二年間にわたる『CASABELLA JAPAN』の連載も、今回の寄稿でひとまずの区切りになります。毎回のテーマは時系列に展開させてきたので、最終回は20世紀末から現代までにフォーカスをし、サステナビリティを巡る建築の問題を取り上げています。建築が工業生産を基本とするような時代になっても、新品の性能だけが建築のすべてではありません。少なくとも、自分の立場は、竣工後の建築が備える存在論的価値、そこに熟成される文化的価値にいかに意味を見出すことができるかにあります。したがって、サステナビリティというフラッグはまたとない追い風で、建築に対するものの見方を見直すことにもつながります。二年間の連載のなかで、私もさまざまに考えを巡らすことができました。とても楽しかったです。編集の小巻さんにはあらためて感謝したいと思います。